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よい家とは、お金をかけるだけではなく、本当に末長く愛着をもって住めるかどうかがキメ手なのである。
ひとつひとつの部屋や場所にいるとき、この部屋で育ってきた、私はここを使って生活してきたのだ、と実感できるもの、そういうものがかもしだす生活のにおいが、われわれにやすらぎを与えてくれるのである。
現代の都市型住居は必然的にスラム化するという説がある。
たとえば、地球上でもっとも先端を行くといわれる都市・ニューヨークの荒廃ぶりが伝えられて久しい。
暴力と犯罪のスラムの街というイメージが定着してしまった。
スラム化し、誰も人の住まなくなった都心の高層アパート群。
ときに保険金めあての放火が起こるぐらいで、人の気配はない。
そこに、人間の住まいの影を見ることはむずかしい。
そんな風景を雑誌などで見ると、非常にうすら寒い思いがする。
東京の都心のマンションもそう遠くない未来に中古不良化し、ニューヨーク同様スラム化するという可能性を秘めている。
これらの現代の住まいと人間の生活に関する暗い見通しの要因は何か。
都市における住居のスラム化には3つの原因があるといわれている。
ひとつには、過密居住。
もうひとつは、メインテナンスをしないこと。
さらに、モラール(勤労意欲)の減退である。
家の構造自体にかかわることは、メインテナンスの不足、つまり家に対する思いやりの欠如ということである。
住みつづける意志の減退というべきか。
過密居住についていえば、アメリカの調査によるとIヘクタール当たりの人口が200人以上になると、過密状態といってよいとしている。
500人を超えたら、これはスラムである。
しかし、先にあげた3つの要因がそろわない限り、そこはスラムにはならないと私は思うのだ。
3つそろってはじめてスラムと呼ぶべき状況となる。
Kの『死線を越えて』という本がある。
そこに神戸のまさしく裏長屋というか、貧民窟とでもいうべきスラムの話がある。
ところが、戦争中神戸も空襲に遭ったが、爆弾が落ちても火災の起こらなかったのは、そのスラムだった。
というのは、そこの住民たちの連帯が緊密で強力な消火活動が行なわれたからなのだ。
私はこれはスラムではないと思う。
たしかにゴミゴミと過密居住であろう。
しかし、人心の荒廃はここにはない。
結局、家が衰退しスラム化するのは、住んでいる人のモラールの低下につきるといえよう。
このモラールとは家族での生活をよりよく営んでいこうとする意志といいかえてもよい。
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